
? 調査研究の目的
船舶の衝突、座礁などの海難事故により、積載した石油類や燃料油が海上に流出したとき、これらの油を機械的に回収することは立地条件及び海況のいかんでは極めて困難であり、また、それらを化学処理することが可能でない場合も多い。特に日本のように、面積に比し海岸線が長く、かつ入り組んでいて、しかも漁業を含めた各種産業や生活区域が海岸近くに遍在する状況では対策の困難性は増加する。
そのため、この種の事故においては、流出油は状況によっては海岸にまで漂着し、そこでは海洋生物や鳥類などへの影響が大きく、社会問題化する。平成2年1月に京都府経ヶ岬付近で発生したリベリア籍貨物船「マリタイム・ガーディニア」号座礁事故、今年1月に日本海で発生したロシア籍タンカー「ナホトカ」号沈没事故による大量の油流出、沿岸漂着が顕著な事例である。しかも、このような状況の下においては流出油は既に低沸点成分を失いそのままでは燃えない、いわゆるムース化油となっている。当然、このようなムース化油の早急な除去が望まれるが、現状では多大の時間と人力を使い、大きな社会的コストを支払わざるを得ないのが実情であり、現在このための実用化された効果的な手法はない。
本調査研究は、このような事情を抜本的に改善するために行われたもので、海上災害防止センターでは、「焼却処理調査研究専門委員会」を設置し、平成6年度から3カ年計画でムース化油を焼却処理する技術を調査研究し、実用化を図ることによって流出油防除技術の発展に資することとした。
平成6年度・7年度においては、主に軽質及び中質原油のムース化油を試験対象として基礎的な焼却処理技術の確立を図ったところであり、最終年度である今年度においては、重質原油及び重油を試験対象として、全ての油種に対して有効かつ実用的な処理技術の確立に努めたものである。
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